ナシ
Pyrus pyrifolia Japanese Pear
ナシ(日本ナシ)は、シャリシャリとした独特の食感と、みずみずしくたっぷりの果汁、すっきりとした甘さが魅力の、秋を代表する落葉果樹です。春には...
かんたんに言うと
ナシはシャリシャリ食感の秋の落葉果樹。多くは1本で実りにくいので開花期の合う2品種を植え、摘果・袋かけ・剪定で実を育て、病気を予防するのがコツです。
Profile
基本情報
ナシ(日本ナシ)は、シャリシャリとした独特の食感と、みずみずしくたっぷりの果汁、すっきりとした甘さが魅力の、秋を代表する落葉果樹です。春には白い清楚な花を咲かせ、秋には甘い実を実らせる、花も実も楽しめる庭の果樹です。「幸水」「豊水」「二十世紀」などおなじみの品種があり、それぞれ味わいや収穫期が異なります。
家庭果樹としては中〜上級者向けですが、ポイントを押さえれば家庭でもみずみずしいナシを収穫できます。栽培のポイントは、第一に、ナシの多くは1本では実がなりにくい「自家不和合性」なので、受粉のために開花期の合う別の品種をもう1本植えること。これが家庭栽培で最も重要な点です。
第二に、日当たりと水はけのよい場所を好み、植え付けは落葉期に行うこと。第三に、おいしい実を採るための摘果、害虫や病気から実を守る袋かけ、そして剪定が必要なこと。ナシは黒星病や赤星病などの病気が出やすいので、こまめな手入れと、病気の予防が大切です(赤星病はビャクシン類が中間宿主なので近くに植えない)。
プロの産地では枝を水平に広げる「棚仕立て」にしますが、家庭では自然な樹形でも育てられます。手間はかかりますが、樹上で完熟させた採れたてのナシのみずみずしさは格別な、育てがいのある果樹です。
💡豆知識
ナシの栽培の歴史は古く、日本では弥生時代の遺跡からも種が見つかっているほど、古くから親しまれてきた果樹です。私たちが食べるナシ特有の「シャリシャリ」とした食感は、「石細胞(せきさいぼう)」という、細胞壁が硬くなった粒状の細胞が果肉に含まれているためで、これはナシならではの特徴です。
日本でよく食べられる丸い「日本ナシ」のほかに、ひょうたん形の「西洋ナシ(ラ・フランスなど)」、中国原産の「中国ナシ」があり、それぞれ食感や味わいが異なります。西洋ナシは追熟させてとろりと柔らかくして食べるのに対し、日本ナシは収穫してすぐシャリシャリの食感を楽しみます。
バラ科ナシ属で、リンゴやモモ、サクラと同じ仲間。明治時代に発見された「二十世紀」梨は、青ナシの代表として一世を風靡しました。ナシは果汁が多く、甘みのなかにすっきりとした酸味があり、夏から秋の水分補給にもぴったりの果実です。
Calendar
育成カレンダー
| 作業 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 植え付け | 12月は植え付け | |||||||||||
| 開花 | 4月は開花 | |||||||||||
| 収穫 | 8月は収穫 | 9月は収穫 | ||||||||||
| 剪定 | 2月は剪定 | |||||||||||
| 追肥 | 1月は追肥 | |||||||||||
| 病害虫注意 | 5月は病害虫注意 |
| 作業 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 植え付け | 12月は植え付け | |||||||||||
| 開花 | 4月は開花 | |||||||||||
| 収穫 | 8月は収穫 | 9月は収穫 | ||||||||||
| 剪定 | 2月は剪定 | |||||||||||
| 追肥 | 1月は追肥 |
| 作業 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 植え付け | 12月は植え付け | |||||||||||
| 開花 | 4月は開花 | |||||||||||
| 収穫 | 8月は収穫 | 9月は収穫 | ||||||||||
| 剪定 | 2月は剪定 | |||||||||||
| 追肥 | 1月は追肥 |
数字は月を表します。色帯のある月がその作業の適期です。上のタブで地域を切り替えられます。
At a glance
ひと目でわかる特徴
Specs
形態と環境条件
形態
- 草丈
- 200〜400cm
- 株張り
- 200〜500cm
- 花のサイズ
- 直径3〜3.5cmの白い花
- 実のサイズ
- 直径8〜12cm
環境条件
- 日照
- 日なた
- 耐寒温度
- -20℃
- 耐暑温度
- 35℃
- 土壌pH
- 6.0〜6.5
- 水やり
- 地植えは根づけば降雨任せ。鉢植えと実の肥大期はたっぷり。
- 肥料
- 有機質肥料・果樹用化成肥料
How to grow
育て方ステップ
-
1
受粉樹(2品種)と苗の植え付け
約7日ナシ栽培でまず知っておきたいのが、ナシの多くが1本では実がなりにくい「自家不和合性」を持つこと。実をならせるには、開花期の合う別の品種をもう1本そばに植えて、お互いの花粉で受粉させる必要があります(例:幸水と豊水など、相性のよい組み合わせ)。
1本だけでは実がならないことが多いので、家庭では2品種を植えるのが基本です。植え付けは落葉期の12〜3月。接ぎ木苗を選び、日当たりと水はけのよい場所に植えて支柱で固定します。ナシは黒星病や赤星病が出やすく、とくに赤星病はビャクシン類(カイヅカイブキなど)を中間宿主とするので、近くにこれらの樹がない場所を選ぶと病気を防げます。場所が限られる場合は、矮性台木の苗を鉢植えにする方法もあります。
💡多くは1本で実りにくいので開花期の合う2品種を植えます。赤星病対策にビャクシン類の近くを避けます。
-
2
病気の予防(黒星病・赤星病)
約90日ナシは病気が比較的出やすい果樹なので、予防が大切です。代表的なのは、葉や実に黒い病斑が出る「黒星病」と、葉の表に橙色の斑点が出る「赤星病」。赤星病は、ビャクシン類(カイヅカイブキ、ビャクシンなど)を中間宿主として伝染するため、これらの樹が近くにあると発生しやすくなります。
植える場所にビャクシン類がないか確認し、あれば離すか、可能なら撤去すると効果的です。黒星病・赤星病とも、落ち葉や被害果・被害葉に菌が潜むので、こまめに片づけて伝染源を減らします。剪定で風通しと日当たりをよくすることも予防になります。病気が出やすい時期(春の展葉期など)に予防的に薬剤を散布すると、より確実に守れます。家庭では、後述の袋かけと組み合わせて、実を病気や害虫から守ります。
💡黒星病・赤星病に注意。赤星病はビャクシン類が中間宿主なので近くに植えません。落ち葉も片づけます。
-
3
開花・受粉・摘果
約30日春(4月)、葉とともに白い清楚な花が咲きます。受粉樹(別品種)があれば、ミツバチなどの訪花昆虫が受粉を助けますが、確実にするため、別品種の花粉を雌しべにつける人工授粉を行うと、より安心です(専用の花粉と毛ばたきを使う方法もあります)。実がつき始めたら、おいしい大きな実を採るために「摘果」をします。
ナシは1か所(果そう)に複数の実がつくので、5〜6月ごろ、形のよい実を1個だけ残して、ほかを摘み取ります。さらに全体でも、葉の枚数に対して実が多すぎないよう間引きます(目安は葉20〜30枚に実1個)。摘果をすると、残した実に養分が集中して、玉太りと甘み、果汁が格段によくなります。摘果をしないと、小さく味の薄い実がたくさんつくだけになり、木も疲れます。
💡受粉樹で受粉させ、5〜6月に摘果して1か所に実1個に。残した実が大きくみずみずしくなります。
-
4
袋かけと収穫
約60日摘果が終わったら、残した実に「袋かけ」をすると、シンクイムシなどの害虫や病気、傷から実を守れ、家庭で無農薬に近づけたい場合に有効です。袋かけは果実が小さいうちに行います。収穫は品種により8〜10月。日本ナシは、西洋ナシと違って追熟させず、樹上で完熟させてから収穫し、すぐにシャリシャリの食感を楽しみます。
収穫適期は、実が品種本来の色(赤ナシは褐色、青ナシは黄緑色)に色づき、果実のおしりのほうまで熟して、軸の近くを持ち上げると軸が枝から離れる頃。試しに1個食べて、甘みと果汁が十分かを確かめるとよいでしょう。樹上で完熟させた採れたてのナシは、果汁たっぷりで、市販品とはひと味違うみずみずしさ。収穫後は日持ちするほうですが、早めに味わうのがおすすめです。
💡摘果後に袋かけで実を保護。日本ナシは追熟させず、色づき完熟したら樹上で収穫します。
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5
冬の剪定
約7日ナシの剪定は、落葉した12〜2月の休眠期に行います。ナシは、短く充実した「短果枝(たんかし)」に花芽がついて実がなるので、これを意識して剪定します。込み合った枝、内向きの枝、真上に勢いよく伸びる徒長枝、枯れ枝を整理して、樹冠の内部までよく日光が当たり、風が通るようにします。
日当たりと風通しをよくすることは、実つきの向上と、黒星病・赤星病など病気の予防の両方に役立ちます。プロの産地では、枝を水平に誘引する「棚仕立て」で、作業性と日当たりを高めますが、家庭では自然な開いた樹形でも育てられます。背が高くなりすぎると、摘果・袋かけ・収穫が大変なので、低めに仕立てると管理が楽です。剪定後は寒肥として有機質肥料を施します。毎年の剪定で樹形と日当たりを保つことが、安定した収穫と病気の予防につながります。
💡花芽は短果枝につきます。徒長枝を整理し日当たり・風通しを確保。低い樹形が管理しやすいです。
Checklist
育てる前のチェックリスト
-
✓3,000〜8,000円
ナシの接ぎ木苗(2品種)
受粉樹として開花期の合う2品種を。鉢植えは矮性台木を。
-
✓800〜2,500円
果実袋・剪定ばさみ
袋かけと冬の剪定用。
-
✓500〜1,200円
有機質肥料・果樹用肥料
寒肥とお礼肥に。
-
○1,000〜3,000円
大型鉢(10号以上) (任意)
矮性台木の苗を鉢植えする場合。
Pests & Diseases
かかりやすい病害虫
アブラムシ
よく発生症状: 新芽が縮れる、葉がべたつく、すす病を誘発。
予防: 風通しを良くし、窒素過多を避ける。シルバーマルチで忌避。
対処: 見つけ次第捕殺、牛乳スプレーや薬剤で防除。
ハダニ
時々症状: 葉に白いかすり状の斑点、ひどいと葉が枯れる。
予防: 葉裏への葉水で乾燥を防ぐ。
対処: 葉裏への葉水を継続し、専用の殺ダニ剤を使用する。
黒星病
よく発生症状: 葉に黒い斑点が出て黄変し落葉する。
予防: 雨よけと風通し、落ち葉の除去。
対処: 罹病葉を処分し定期的に殺菌剤を散布。
Harvest
収穫の情報
Common mistakes
失敗あるある TOP3
⚠ 受粉樹がなく実がならない
花は咲くのに実がつきません。
原因: 自家不和合性で受粉樹(別品種)がない。
対策: 開花期の合う別の品種を一緒に植えるか、別品種の花粉で人工授粉します。
⚠ 黒星病・赤星病
葉や実に黒い斑点や橙色の斑点が出ます。
原因: 黒星病菌、赤星病菌(ビャクシン類が中間宿主)。
対策: ビャクシン類を近くに置かず、落ち葉・被害果を片づけ、予防散布と剪定で風通しを確保します。
⚠ 実が小さい・味が薄い
小さな実が多くつきます。
原因: 摘果不足による実のなりすぎ。
対策: 5〜6月に摘果して1か所に実1個に絞り、養分を集中させます。
FAQ
よくある質問
ナシの多くは1本では実がなりにくい「自家不和合性」です。実をならせるには、開花期の合う別の品種をもう1本そばに植えて、互いに受粉させるのが基本です(例:幸水と豊水)。確実にするため人工授粉も有効です。
「赤星病」です。ビャクシン類(カイヅカイブキなど)を中間宿主として伝染するので、近くにこれらの樹がないか確認し、あれば離します。被害葉や落ち葉を片づけ、予防散布も有効です。
摘果不足が主な原因です。5〜6月ごろ、1か所に実1個(葉20〜30枚に1個が目安)になるよう摘果すると、残した実に養分が集中して大きく甘く、果汁たっぷりになります。
日本ナシは西洋ナシと違って追熟させず、樹上で完熟させて収穫します。品種本来の色に色づき、軸を持ち上げると枝から離れる頃が適期。試しに1個食べて甘みと果汁を確かめるとよいでしょう。
家庭栽培ではおすすめします。摘果後、実が小さいうちに袋をかけると、シンクイムシなどの害虫、病気、傷から実を守れ、きれいに仕上がります。無農薬に近づけたい場合に有効です。
矮性台木の苗なら鉢植えでも育てられます。10号以上の大きな鉢を使い、受粉のため2品種を用意するか別品種の花粉で人工授粉します。実の肥大期は水切れに注意します。
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