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「日当たりが大事」「水切れで枯れる」「風通しを良くする」——園芸ではこうした言葉が当たり前に使われます。しかしその根拠は、すべて植物の体の中で起きている3つのはたらきにたどり着きます。光合成・呼吸・蒸散。この3つを理解すると、日々の世話が「言われたとおりにやる」から「理由がわかってやる」に変わります。このレッスンは、ほかのすべてのレッスンの土台になります。
植物は「自分で食べものをつくる生きもの」である
動物は、食べものを外から取り込みます。植物にはそれができません。かわりに、光のエネルギーを使って、水と二酸化炭素という材料から自分で糖をつくり出します。これが光合成です。
3つのはたらきは、それぞれ役割が違う
光合成|つくる
葉の葉緑体で、光のエネルギーを使って水と二酸化炭素から糖と酸素をつくります。光のある昼だけのはたらき。つくられた糖が、茎・根・花・実すべての材料になります。
昼だけ・収入呼吸|つかう
酸素を取り込み、糖を分解してエネルギーを取り出します。動物とまったく同じしくみで、昼も夜も休みなく続きます。根も葉も、体のすべての細胞が呼吸しています。
24時間・支出蒸散|はこぶ・冷やす
葉の裏の気孔から水蒸気を放出します。この流れが根の水を引き上げるポンプになり、同時に気化熱で葉の温度を下げます。気孔が開いている間に起きます。
運搬と冷却成長とは「収入が支出を上回った分」
光合成でつくった糖から、呼吸で使った糖を引いた残り——それが成長に回ります。植物の成長は、この収支の黒字分にほかなりません。
この見方をすると、これまで別々に見えていた現象が一本につながります。
暗い場所で少しずつ弱るのはなぜか
呼吸は暗くても止まりません。光が足りず光合成が呼吸を下回ると、収支が赤字になり、蓄えを取り崩して生きることになります。急には枯れず「じわじわ弱る」のはこのためです。
猛暑で生育が止まるのはなぜか
呼吸は気温が上がるほど活発になります。一方、光合成は高温では頭打ちになります。結果として支出だけが増えて収支が悪化し、真夏に成長が止まる「夏バテ」が起きます。
夜の温度が大切だと言われるのはなぜか
夜は光合成がゼロで、呼吸だけが続きます。夜温が高いほど糖の消費が増えるため、昼夜の温度差がある環境のほうが糖を蓄えやすく、実や根が充実します。
弱った株に肥料が効かないのはなぜか
肥料は体をつくる材料であって、エネルギー源ではありません。光合成が足りていない株に材料だけ足しても、加工する力がないため使われず、濃度障害の害だけが残ります。
気孔——ひとつの穴が抱える矛盾
葉の裏には気孔という小さな穴が無数にあります。ここは、光合成の材料である二酸化炭素の入口であり、同時に蒸散で水が出ていく出口でもあります。つまり植物は、常に相反する要求のあいだで気孔の開き具合を調整しています。
| 気孔を開くと | 気孔を閉じると |
|---|---|
| 二酸化炭素が入る → 光合成できる | 二酸化炭素が入らない → 光合成が止まる |
| 水が出ていく → 水を消費する | 水を守れる → 乾燥に耐えられる |
| 気化熱で葉が冷える | 葉の温度が上がる |
真夏の日中に植物がしおれるのは、この調整の結果であることがよくあります。水を守るために気孔を閉じ、蒸散による冷却も止まるため、一時的にしおれた状態になるのです。夕方に回復するなら水切れではありません。ここで慌てて水を足すと、かえって過湿を招きます。
風通しが大切な、しくみの上での理由
「風通しを良く」はほとんど呪文のように言われますが、根拠は3つあります。
- 二酸化炭素が供給される……空気が動かないと葉のまわりの二酸化炭素が使い尽くされ、光合成の速度が落ちます。
- 蒸散が進み、水と養分が流れる……湿った空気が滞ると蒸散が鈍り、根からの水と養分の運搬も鈍ります。
- 葉が過度に濡れ続けない……表面が乾く時間ができることで、株が傷みにくくなります。
風通しは「なんとなく気持ちがよさそう」ではなく、光合成と運搬の速度を左右する条件なのです。
糖はどこへ行くのか——優先順位がある
つくられた糖は、必要とする場所へ運ばれます。このとき植物には明確な優先順位があり、状況によって配分を変えます。
- 生育が順調なとき……葉や茎を増やし、光合成の能力そのものを大きくすることに投資します。
- 株が充実したとき……花や実、根や球根に糖を回し、次の世代や翌年に備えます。
- ストレスを受けたとき……成長を止め、生き延びることに配分します。
「チッ素をやりすぎると葉ばかり茂って実がつかない」のも、「花がら摘みをすると次の花が咲きやすい」のも、この配分の話です。種ができると植物は目的を達したと判断し、糖を花に回すのをやめます。だから咲き終わった花を摘むことに意味があるのです。
🌟 この章のまとめ
植物は光合成で糖をつくり、呼吸でつかい、その差額で成長します。呼吸は昼夜を通して止まらないため、光が足りなければ収支は赤字になり、じわじわ弱ります。蒸散は水と養分を運ぶポンプであり、葉を冷やす装置でもあります。気孔は二酸化炭素の入口と水の出口を兼ねるため、植物は常に光合成と節水のあいだで調整しています。日当たり・水やり・風通し——世話の理由はすべてこの3つのはたらきから説明できます。
光の量と質については日当たりと置き場所、水が動くしくみは水やりのしくみ、糖以外の材料については肥料のしくみでさらに詳しく扱います。次は土と生きものの力を活かす有機栽培・無農薬の基礎へ進みましょう。
よくある質問
光合成でつくった糖から、呼吸で使った糖を引いた残りが成長に回ります。呼吸は昼夜を通して止まらないため、光が足りず光合成が呼吸を下回ると収支が赤字になり、蓄えを削りながらじわじわ弱っていきます。
呼吸は気温が上がるほど活発になる一方、光合成は高温では頭打ちになります。糖の支出だけが増えて収支が悪化するため、成長が止まります。この時期に肥料を足しても使われず、かえって根を傷めます。
水を守るために気孔を閉じ、蒸散による冷却も止まった結果であることがよくあります。夕方に回復するなら水切れではありません。ここで水を足すと過湿を招くため、まず土の湿り具合を確かめてください。
空気が動かないと葉のまわりの二酸化炭素が使い尽くされて光合成が鈍り、蒸散も進まないため水と養分の運搬が滞るからです。さらに葉の表面が乾く時間ができ、株が傷みにくくなります。